子育てでは一喜一憂、子どもを育てているのか自分が育たなければいけないのかわからない状態でバタバタと毎日は暮れた。
そして、また嫌な一件が舞い込んだ。例のインサイダー取引嫌疑未解決のまま、リーは今の会社が社長の経営手腕、道義心、計画性の欠如から今後いくらも持ちこたえられず破産するだろうから、2月いっぱいで退職する、そして娘たちのために離婚はしない、と言って来たのだ。
あきれるほどの社長の失態はかねがね聞かされていた。
しかし、次を考えず失業とは穏やかでない。
「姉貴も失業は経験したし、義妹だってしたんだから、そう目くじら立てることでもないよ。」
と言い放ったのには頭に来た。義姉は独身だし、義妹は夫のちゃんとした収入がある上での副業なのだから、リーとは立場が違う。
正直言って、その当時まで夫にボーナスがないことすら想像したこともなかった私は、夫が失業し、終日連日家にいることすら耐えがたいことに思えた。
そして、子どものために離婚はしない発言だが、彼にその種のことを考えさせ、言わしめるような状況に私たち夫婦は陥っていた。
「子どものために」………
娘たちは夫婦をかろうじてつなぐ、まさに鎹(かすがい)であった。私もリーもランとメイがいるからこそ家庭を顧み、日々なんとか笑顔を失わず過ごしていた。
危機的な危険性を孕みながら、日常の些事雑事に忙殺され、時間は過ぎて行った。