昨日もいろいろあった。
午前中はまったく外出せず、午後1:30に蔡老師が二胡を教えに来てくれる予定だった。
20分ほど早く到着した彼女だったが、つき合いは長く、身の上話も互いにする仲ゆえ、最近立て続けに起こる「試練」の詳細を聞いているうちに40分ほど経ってしまった。もちろん、レッスンはそのぶん時間を延ばしてくれるし、授業はふだん通りの熱心さである。多忙な蔡老師となかなかゆっくり話す時間もなく、昨日は貴重な機会だった。「二泉映月」
は猛練習中である。
その後、娘たちと706のバスで地下鉄MRTに乗りに行き、一度台北駅で乗り換えて、南港線の忠孝新生駅まで。そのホームから李姐(李姉さん)に電話を入れる。自宅から迎えに来てくれるのを、暑い地上に出ず、地下鉄構内で待った。
李姐とはこのブログにも登場した、皮膚科に勤務していた看護士さんである。8年前、突如現れた私史上初の目の下のクマに悩み、解消方法を探していた折見つけた皮膚科エステの主任看護士が彼女だった。
よって、もう8年来の大切な知人の一人である。
私より十あまり年長の李姐は、昨夏私が台湾を後にした直後、乳癌が見つかり、治療に専念するためその皮膚科を辞めた。
私はひどく心配して、日本から娘たちの写真を同封したエアメールを何度も送ってきた。
一連の必要な治療は済み、現在は自宅で療養中だ。放射線治療後伸びた髪はまだ短く、少年のよう。ふっくら丸い顔はそのままで、以前との変化は外観ではほとんど認められない。
李姐の家を訪れるのは初めてだ。仕事に忙殺されていた彼女を「個人的に」訪ねるのは無理だった。無論、ランとメイの実物を彼女が見るのも昨日が初めてだった。
李姐のマンションは仁愛路と建国南路が交差する、瀟洒な住宅地にある。すぐそばに大安森林公園があり、毎週末建国南路の高架下に立つ花市は古くから続く伝統を持つ。交通の利便性もよく、かなり地価が高い一帯だ。
しゃれたお店やマンション、ホテルが並び、緑も多く、市の中心部とは思えない静けさに和む。あんなところに住んでみたいものだ。
さて、お宅に到着すると、26になる娘さんが在宅だった。李姐には息子もいるが、今、オーストラリアに留学中である。
色白で鼻筋の通った気立てのよい娘さんがランとメイの守りをしてくれたおかげで、私と李姐は2時間話に花を咲かせた。
気がつくと、早く夕食に行かないと、会社帰りに迎えに来てくれるリーとの約束の時間に間に合わなくなってしまう! 慌てた。もうすぐ7時だ。
招待されたのは、歩いて10分足らずのレストランだった。麺、包子、蒸餃、粥などが看板メニューのチェーン店、「朱記」。正式名称は朱記餡餅粥店だ。
李姐が癌治療で食欲がない時、それでも栄養あるものを口に入れなくてはならなくて困ったが、この店の牛肉餅などはのどを通ったという。
平日なのに1階2階とも相席を頼まれる盛況ぶりだった。日本から台北を観光する際、旅行社が連れて行ってくれるのか知らないが、どうぞ覚えておいてください。ふつう、これはもっと油っこいもの、との観念がある品でも、驚くほどさっぱり、美味に仕上げてある。何を食べても満足、見た目も精緻、中華は油っこくて苦手という人にも絶対喜ばれると思う。私もぜひまた行きたい。リーズナブルなのもありがたい。
時に厳しく、ずっと温かく寛容な李姐との語らいは、改めてこの出逢いへの感謝と深い縁を実感させてくれた。
目の下のクマも、作ってみるものである。