陳医師と一人の看護士と私だけが分娩室に残った。産後の処置が必要だった。
なかでも傷口の縫合は思い出してもコワい。麻酔は施されているものの、かなり痛かった。私は依然眼鏡などできず、辺りはぼんやりとしか見えないのだが、足元の陳医師が針と糸を持ち、縫っている様子がわかる。相当長い糸らしく、一回一回医師がびゅーんと右手を上の方に上げて引っ張っている。チクリッ。続いて引っ張られる衝撃が傷口にひびき、何とも気持ち悪い。痛い。
なのに、陳医師はニコニコと私の踏んばりを讃え、「えーっと、これ、日本語で何て言うんだっけ?」と訊いたりしながら、次々と私に話しかけてくる。私は、文字通り歯を食いしばって応えるしかなかった。
ようやく一連の処置が終わり、5階の病室に移されたのが7時過ぎ。
リーは会社に電話して、規定通り3日間の「産休」を許された。
10月30日。晴れ。前日夜のロングウォークが効いたのか、予定日より10日早く、シュンランは破水して誕生した。