大学3年生から国際関係論のゼミに学び、担当教授の専門は日米戦後政策だったが、太っ腹の彼は卒論に対する注文を言い渡す際、「世界中、どこのことを書いてもいいです。」と述べたのだ。ふだんと変わらぬ、人の良い柔らかい笑顔を湛えて。
しばらくは迷ったが、私は中国を書くことを決意した。最終的に絞ったテーマは「毛沢東と文化大革命」、サブタイトルは「中国にとって、彼は神であったか」である。
こう言うのは僭越だが、私は高校以降はまじめで、成績も悪くない学生だった。卒論も早くから準備を始め、興味あるテーマでもあり、コツコツ書き進めた。そして、卒論受付初日、一番に努力の結晶を提出したのだった。
その後だったろうか、今度はだんだん中国語を話したいという思いが
心を占めてきた。中国中央電視台のキャスターが話す中国語を聴くと、あー、私もあんなきれいな言葉を話してみたい、とうっとりするようにもなった。
思案の末、NHK学園の通信教育に申し込み、独学で始めることにした。まもなく大学を卒業し、就職が決まっていた某全国チェーンホテルの入社前研修に参加する頃のことだった。