「来てくれる記者は安田さんていう人らしいよ。」
と父に話すと、中学校教諭だった父の教え子だということがわかっており、親近感は会う前から湧いていた。もちろん安田さんの方も承知の上で、
「僕、理科は苦手だったんで、お世話をかけてしまいました。」
と言う。謙虚な人だ。だいたいそういう人ほど結構よく出来たんだと思う。
40分ほど応接間で話をする。新聞社に送ったメールには二胡のことも書いていたので、最後に二胡を持った姿を写真に撮りたいと言われる。
畳敷きの奥の間に移動し、二胡を持ち、構えて、
「弾きましょうか?」
と緊張して訊ねると、
「写真だけでいいですよ。」
とあっさり答えられた。
数枚シャッターを押した安田さんは、4〜5日後の紙面に載せられると思います、と丁寧に言い、帰って行った。
あとで両親に話すと、
「新聞では二胡の音は聴けへんのやから、弾く必要ないやろ。」
とあきれられた。
まあ、それもよかった。とにかく、またひとつステップを踏んだ気持ちになった。