2010年03月01日

『客家の祖母より、綿々と』〜4〜

「からだの具合はどう?」
小学生が国語の教科書を吟唱するような調子になる。
「足が弱って痛い。もうすぐ死にます。」
「は?なに言ってるの?痛くても歩かないともっと弱るよ。歩いてる?」
 隣の部屋にも丸聞こえだろうと思いつつ、会話を続ける。
「はあー、ときどき、近所の年寄りといっしょに散歩する。」
「それはいい!だれかといっしょのほうが安心だからね。」
 本当にそうだ。一人で転びでもしたら大変だ。
「ことしの冬は寒かったねえ。」
高温多湿な台湾の気候に合わせた造りのこの<老齢一條龍>では、すきま風も容赦なく吹き込むにちがいない。
「とーても寒かった。夜、ひとりはさびしいよ。でも、寝てしまったら何も感じない。」
 私は同情する一方で、祖母の言い回しにユーモアを感じ、おかしくなった。
「さびしいけど、おじさんやおばさんがよく見に来てくれるでしょう?」
 祖母は約二十年前に夫を亡くしたが、二男四女に恵まれ、そのうちの次男と三女が苗栗に住み、しょっちゅう老母を見舞いに帰っているのを知っている。
「今日だって、ほら、こんなにおおぜいおばあちゃんに会いに来たんだよ。」
posted by マダム スン at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 母娘3人で日本へ帰ることになる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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