祖母宅から百メートルほど行った山麓に五聖宮が座している。いわゆる純粋な仏教と異なり、仏教、道教、儒教が複雑に融合して発展してきた民間信仰の廟で、赤や黄を基調とした複数階建てになっている。そこには数人の神像が祀られ、ひとつの廟参拝で、複数の神仏を拝める。
神仏同士がケンカでもしはしないかと、と浅薄な危惧がよぎるが、台湾の人々はその合理性を優先した。
義母がその日を帰省に選んだのは、五聖宮で当日催しがあるためだった。ふだんから披露宴なども行われ、私も上の娘を連れて、祖母に付き添い列席したことがある。何はともあれ、祖母を訪ねた時は必ず足を運ぶ、馴染み深い場所だ。
五聖宮の立派かつ派手な鳥居は廟から遠く、そこを越えてから祖母宅や他の多くの民家が散在している。車中で眠気、退屈と闘っていた娘たちは、着くなり散歩に出かけたがった。例年より寒く長かった冬は、去る速度も鈍く、とりあえずしっかり上着を羽織って、我が家四人は散策に出かけた。