とは言うものの、リーは元来大変な子煩悩。そう簡単に娘と長期的に離れることを決意できたりはしない。言い始めた頃は、日本で生計の道が開けるだろうとの楽観的観測があったからだった。
しかし、どんどんその観測は極めて甘かったことが露呈し始め、リーの機嫌が悪くなることがあった。私の両親から日本へ帰って住むよう言われたことは一度もなかったし、リーが嫌なら帰って来なくてよい、とのお達しが来たりした。
その旨リーに伝えても、もう意地になったように彼は母娘で日本へ帰るよう言い張るのだった。
7月。
気が狂いそうな猛暑の中、少しずつ帰国準備を進める。台湾の方がだんぜん安い物を買い出しに出かけたり、公立幼稚園に入るランは問題ないが、保育園は父親の所得により保育料が異なるため、リーの所得を証明する書類などを用意したり、有効期限が少なくなったパスポートの更新も早めにしたりと忙しくなってきた。