だが、リーも私もかつて勤めていた会社の財務担当者はご丁寧にもそれら書類を自分の物以外保管していて、何か情報を聞きつけてか、検察官のチェックが入った際、それらを見せて事が大きくなったというのだ。
その会社は急成長し、私を含め、全社員多かれ少なかれ株を配当されたのだが、幹部社員は当然その額も量も多かった。リーもそのうちの一人で、彼の慎重かつ保守的な性格ゆえ、大事に持っていた。
そのうち、父親が癌のため多額の治療費を要したり、私との結婚、出産などに伴い、まとまったお金が必要になった時、ある程度まとまった株を売却したのは事実である。
が、もちろんそういう正当な理由があり、またそのような状況にあったからであったのだが、それがたまたま後から見れば会社の株価が急に上昇した時期と重なり、嫌疑をかけられたというのだ。
リーにとっても、同様にまったく故意でも悪意でもなかった同僚たちにとってもまさに青天の霹靂である。泣くに泣けず、何とか手立てを考えなくてはいけない。
その会社を退職後も気が合い、つき合いがある元同僚たちとリーはしばしば連絡を取り合い、対策を練った。その一環として、今は亡き父親が癌のため長期入院していた病院に当時の医療費の証明書を発行してもらったり、リーの無罪を証明するための奔走が始まった。