それ以後、義弟夫婦は互いに勤めている会社に退職の意思を伝えたりまだ購入して日の浅いマンション売却の計画も進めて行った。
暑い5月に入る。
ランが秋に入園する幼稚園が決まり、その園庭に時々娘たちを遊びに連れて行ける新たな子守り法も増え、上旬には毎年恒例・日本一時帰国用の航空券の予約も完了したが、私の気持ちは沈んでいた。
長女と次男一家が住むことになる上海へ義母も移住するのでは、との憶測が外れたのだ。台湾と中国の中国語には少しちがいはあるものの基本的に同じ言語だし、2人も子どもがいるなら、という私の考えは甘かった。やはり住み慣れた台湾がいいと言う。
義母自身が上海に越すのが嫌ならそれは彼女の自由だが、リーと恋愛・新婚当初は、義姉が義母宅からバスで15分くらいのところに住み義弟一家は義父母と同居していたので、長男とは言えリーの奥サンになるのに大きな抵抗はなかった。
だが、期待とは裏腹に、義姉と義弟は台湾を離れ、そこに残る義母の世話の多くをリー一人が負う格好になる雲行き……
誤解することなかれ。
私が憂いていたのは、私がひとりっこで、いつか日本へ帰り、老い行く両親の世話をしなければならぬ身。では義母はどうなるの?私の実家はどうなる?
どっと落ち込んでしまった。