彼が思っていたほどでなかったので、そこで売ることはやめ、またしばらく時間は流れた。あこがれて、ようやく自力で手に入れたパジェロ。もちろんリーは手放したくないのは容易に見て取れる。しかし、本当にガソリン代はバカにならなかった。
私とも共通のある元同僚が知人のデイーラーと新しい買い手がリーの車を見たいと言っている、と連絡してきた。
2月3日よく晴れた土曜日の午前11:30、リーは私にも同席するよう言うので、仕方なく娘たちも乗せて指定の場所まで行く。
リーたち男性4人は路肩にそれぞれの車を停め、協議する。それは1時間以上も続き、評価額は今後どこも似たようなものなので、売るなら今日の方がいいと言われる。
「この売値でどう?いい?」
とリーは私に訊くが、私にはよく理解できない世界の話だし、まさかここで決定せねばならないとは思っておらず、「あなたに任せるわ」としか言えない。
結局リーはその場で契約書にサインする。
約1週間後には愛車パジェロを引き渡さねばならなくなった。
たしかに「金食い車」だったパジェロを他の車に替えてほしいと願ってきた。だが、あまりにも急で、私の目の前で行われた儀式にその後打ちひしがれる。リーがものすごく不憫で、可哀そうで、身の置き場がないほどつらい。
と同時に、不和に悩みながらも、根幹では私はリーを大切に想っているのだと知る。
パジェロが我が家を巣立つ日、私はそっと地下駐車場に下り、「ありがとう。次の家族にも大事にしてもらうんだよ」と別れを告げた。