私が学生時代、長期休暇で東京から帰省していた期間通った教室で一緒だった。口は良くないが、正直で素朴、とてもいい先生だ。
自業自得とは言え、ランは泣きながらもがんばった。麻酔注射を打ち、ひと針。そこで血が止まったので、ひと針で済んだ。包帯を巻かれ、化膿止めの飲み薬が出る。
その後3日間薬を換えてもらいに通い、5日目に抜糸して一件落着。
こんなことはあったが、基本的に私たちは実家でのびのび、充実した日々を送った。
母は60歳以上にしか入学資格がない地域のOB大学にこの年入学、週に一度、お弁当を持って授業に行った。
私は、隣り町の子育てセンター主催の1日俳句講座へも顔を出した。託児があり、ランもメイも連れて行けた。かねてから俳句に興味を持ち始めていたため、とてもタイムリーな企画に出会えたわけだ。
駆け帰る 丸い手のひら 初きゅうり
恥ずかしながら、初めて詠んだ句。畑でもいだきゅうりをうれしげに持ち帰るランの姿を描いた。
台湾でも俳句つくりをしようと『俳句歳時記』まで購入したが、台湾に帰ってから、ここでは句が詠めないと愕然とする。
気候がちがうからだ。
日本は四季がはっきりしている。春夏秋冬の境があいまいで、亜熱帯の台北では、日本の季語の感覚や時期がずれてしまう。
俳句は日本ならではの、日本が誇るひとつの文化なのだ。