それでだろう、送別会にはぜひ私と娘たちも一緒に、とのお誘いがあり、3月31日金曜日夕刻に集合、みんなで予約してある韓国料理の店へ歩いた。
穏やかな日で、風は冷たいものの美しい黄昏に恵まれた。COEXや現代百貨店を左手に見て、談笑しながらゆっくり歩いた。
私とリーがカムジャタンのファンというので、ソウル支社の面々も賛同、大鍋のそれをみんなで囲んだ。辛い料理なので、いつものように娘たちにはあらかじめ食べ物を用意し、持って行った。
10人ほどに減ってしまったソウル支社のメンバーは、湯気を立てるカムジャタン同様に温かかった。
異国の台湾から来た、ハングル語ができない支社長のリー。
本社命令に従い、断腸の思いでリストラを断行した彼の心中をすべて理解してくれていたのだろう、彼の退職をひどく惜しんでくれた。
送別会のみならず、リーと娘たちに洋服までプレゼント、申し訳ないくらいだった。
気心が知れ出したキミーに話したことがある。
韓国に来る前は本当に気が重かった。ソウルは寒いし、韓国人は日本人に敵意を持ち、冷たいらしくて怖かった、と。
「歴史的にはそういう事実も過去もあるけど、一般の人はもうそんなことないわ。敵意なんてとんでもない!」
キミーは笑って答えた。
ありがたかった。そして、こんなにソウルが好きになるとはまったく予想していなかった。
韓国と、この情厚い仲間とお別れかと思うと、あらためて寂しさがこみ上げる。切ない夜。