私の「二胡の先生求む」のHP書き込みを見て、その藤吉さんは返信してくれたが、リーが「待った!」をかけたのだ。
藤吉さんは20代後半、長野出身のボーイッシュな女性で、ハングル語を長く勉強し、ソウルで仕事をしていた。
藤吉さんがソウルで大学在学中からの友人に二胡がとても上手な人がいるとのこと、その友人は中国出身で幼い頃から二胡を学び、父親が経営する会社が韓国の会社と深いつながりを持っているためソウルに来た。彼女本人は音大で専門的に二胡を学ぶ意志もあったそうだが、父親の事業を将来サポートするために別の学部を選んだという。
「彼女がいつか大学でイベントが行われた時、彼女の二胡を知る人に勧められ、みんなの前で演奏したんです。それはもう上手で、ふだん大人しい彼女にそんな才能があったのかという驚きもあって、衝撃を受けました。頼まれてソウルでも教えていて、今は忙しくすぐには無理そうですが、スンさんのことを話したら前向きな返事をくれました。」
と藤吉さんは眼鏡が似合う、少年のような面持ちで答えた。
ところが、リーが反対した。
こんなご時世、物騒な事件も多く、極力、他人を自宅に入れたくないと言う。坂下さんや林さんたちの来訪には何も言わなかったので意外であったが、二胡レッスンのその件になると不機嫌になるため、衝突を避けるため、私はあきらめるしかなかった。
だが、電話で話す藤吉さんに好感を持ち、気が合いそうで、おかしな縁で彼女との親交が始まったわけである。
藤吉さんはソウルで会った日本人の中で最も流暢なハングル語を話した。彼女が来た時には、気のいい管理人のテイさんにふだん言いたいことをいろいろ通訳してもらえて嬉しかった。