陳医師はしばし動揺した表情を見せたが、「大丈夫です、問題ない」と答え、すぐ正しいワクチンを打ち直した。
私の狼狽ぶりはまだ続いた。
もう要らない日本脳炎ワクチンを打った後、すぐ他のを注射?!
同じ日に打ってもいいの?!
リーは私よりずっと冷静だが、驚いていた。
本当に大丈夫だろうか。
ところが、案の定と言えば案の定、その日の夜からランの様子がおかしくなった。
リーがミルクを飲ませてやると、吐いてしまった。
ほどなくして下痢も始まった。熱もある。
翌日の土曜日、メイを義母に預けてランを幼婦病院へ連れて行った。
小児科の医師は40歳前後と思しき男性、予防接種の事や経過を説明する。リーが話してくれるが、私も時々補足する。
「やはり、予防接種が原因でしょうか。もしそうなら、どうなるんでしょうか。」
すがる思いで尋ねた。すると、その医師は、のん気と困惑が入り混じった顔つきで、
「さあ、、、こういうケースは見たことないのでわからないなあ。」
と言う。
私はめまいがした。そして、医者たるもの、如何なる時も患者やその家族に不安を増長させるような言動をしてはならないと腹が立ってきた。その医師の態度はとても無責任に見えたからだ。