皮膚科医院に行くのだが、別に疾患があったのではない。エステに行くのだ。
日本にいた頃はエステなんて一度もやったことはなかった。まず、すごくお金がかかるイメージがあったし、それに見合う効果があるのか猜疑心が消えなかった。
では、なぜ台湾でそれに目覚めたかと言うと、老化をはっきり実感したからだ。30代半ばにさしかかり、生まれて初めて目の下のクマが気になるようになった。寝不足や疲労で一時的に現れるものもあるようだが、私にはそういう原因は思い当たらない。「老化してるんだ、これは、、、」かなりのショックだった。そして、いても立ってもいられないくらい焦りを感じた。
それから、登校したり、週末街を歩く時、エステ店やその広告などを注意して見るようになった。効きそうで、高額すぎないお店を探した。
そんな折、自宅近くの薬局で目の下のクマに効く化粧品はないか見に行ってみた。そこに置いてあるパンフレットに目が留まる。手に取り読んでいると、いろいろ質問してみたくなった。
白衣を着た薬剤師女史に尋ねると、そのパンフは数軒隣りの皮膚科のもので、エステ部門を担当している看護師さんが詳しいから、ちょっと待って、呼んで説明してもらうわ、と言う。
そこに、これまた白衣を着て駆けつけたのが李さんだった。40代後半くらいだろうか、丸顔でやわらかい笑顔が、エステ入門者の不安多き私の尻込みを和らげてくれた。
あれは11月だった。思いもよらず、その薬局の店先で、石橋をたたいてたたいてようやく渡る私が、数日後李さんの皮膚科エステに行く予約をしてしまったのだった。