リーは午前9時以降に出勤する。
ランと彼はだいたい8時頃まで寝ている。
問題はメイ。彼女さえ起きて泣いたりぐずったりしなければ、朝のその時間帯は唯一、私が自由に単独外出可能となるものだった。
メイが前回ミルクを飲んだ時間や、表情などをじぃっと見て考え、「よし、今だ!」と靴を履く。
朝の散歩は爽快だ。
交通量の多い台北も、いくらか空気が澄んで見える。
7時過ぎには小学生たちがもう学校へ向かう姿がある。早い。
また、その頃には市場が立つ。
大型スーパーは9時を待たねばならないが、日本で言えばJAにあたるような「農会」経営のスーパーは8時半開店。
マクドナルドは24時間営業。朝でも結構レジ前にはおおぜい並んでいる。
道路際の「屋台」は早起きで、小龍包や包子、葱油餅、サンドウィッチ、饅頭や豆乳などの定番朝食ゲットにはなんら不便はない。登校、出勤途中に買って行く人はたくさんいる。朝食は自宅でとるのがほとんどの日本と概念がちがう。
不思議なもので、朝のせわしなさと活気からは元気をもらえる。
私はそういう光景の中のウォーキングを30分程度満喫し、極力リーたちが起床する8時までに帰宅できるよう心がけた。リーは豆乳と、卵とハムをフライパンで焼いて食パンに挟む朝食を自分で作る習慣が長年続いていたが、やはり目覚めた時に私がいた方がいい気がした。
あまりに私が毎日熱心に歩きに出るので、リーにはたびたび、
「毎朝毎朝まじめに出かけるねえ。外にイイ人でもいるんじゃないの?」
と言われたものだ。本気かジョークか判断しかねたが、気にしない気にしない。
この早朝ウォーキング、台風が襲来して警報が出た時はさすがに強行は無理。休んだのはそんな時だけで、ここにも私の一徹ぶりが表れていた。