そんな中で、やはり足が向いたのは、かつて暮らしていた新店市の教会だった。あそこなら教会が所有、運営する公園、ホテル、多目的センターなどもあるし、そこで働く職員や関係者、神父さまなどにも知り合いが多く、少なくとも面識ある誰かに会えることは確実だ。ちょくちょく電話をしたり、都合が合えば会って話す何姐も近辺に住んでいて、うまくいけばちょうど教会内にいるかもしれなかった。何姐は独身で、事情を話せば自宅に泊めてもらえるかもしれないし、そこのホテルも空室があれば宿泊できるはずだった。
結構距離はあるが、バス一本、一区間にあたる15元ぽっきり、30分前後で行ける。OL時代何度も通ったコースでもあった。
果たして、幸い、何人かの知人と何姐にも会えた。やはり、心安らぐ「帰って来てよい、数少ない居場所」であった。
何姐には、その日急に出て来た理由を話はしたが、彼女から「うちに泊まる?」と訊かれなかったし、親しい仲だからこそ言い出せない遠慮があり、何姐宅泊構想は消えた。
ホテル泊も何度も考えたが、無断外泊はリーの怒りを助長する恐れがあるし、何と言ってもランが恋しかった。
結局、またバスで帰宅したのは9時15分頃。もちろんリーとランは義母宅から帰って来ていた。リーには叱られなかったが、翌日、義母に電話をかけるとかなり意気消沈しており、私はすぐ彼女に会いに行った。