蛇皮は透明度がよく、「鱗」のひとマスひとマスが均一なほど良い。
音色も一把一把微妙に異なり、安定し美しいもの。
また、二胡に使用される木材は紫檀、黒檀、紅木の順に適していると言われている。一概には言えないが、値段もその順番に高い傾向がある。
蔡老師が最も薦める二胡はちょうど私が欲しいと思っていた紫檀のもので、上記の条件をも満たしていた。
「音も安定してていいと思うわ。この値段にしてはすごくいい品よ。」
と言う。楽器屋社員氏も同じ意見を述べた。
二胡の三大産地は北京、上海、蘇州で、それは蘇州の陸林生氏が制作したものだった。
ここまで言われて他の二胡を選ぶ気持ちにはなれなかった。予算オーバーの痛手など一過性のものだと感じ、私はその二胡に決める。
ケースと松脂はセットとして付いてきた。松脂も必需品だ。それを塗らないと音が出ない。
やったー! これが私の二胡だ。
同行してくれた御三方に重ね重ね礼を言い、二胡を抱きしめるように抱え、だいぶ日が傾いた戸外へ出た。よく晴れた10月の午後だった。
琴の師範を持つ母に報告すると、彼女は私もやりたいと羨ましがった。
そして、ついに10月21日、二胡初レッスンの日がやって来た。