そもそも、どうして私が二胡に惹かれたのかと考えてみると、2度目の台湾留学に来て間もない頃、友人と2人、MRT(台北を走る地下鉄)で新北投駅に行き、駅付近にあった小さな公園を散歩していた時にさかのぼる。
5月末か6月上旬の暑い午後だった。
それでも、その公園を歩く人はいたし、老紳士(早いハナシがおじいちゃんだけど)が4〜5人大きな石に腰掛け、日向ぼっこにはかなり暑いが、とにかくうざうざ楽しげにおしゃべりしていた。
だが、その何の変哲もないような午後の風景に、なにやら心地良い音が流れて来る。
見ると、おじいちゃんグループの中の一人が三味線のような細い楽器を立てて音を奏でている。
隣りにいた台湾の友人は「すごいな」と拍手するし、私もずっと聴いていたいほどだった。
馴染みのない楽器だった。けど、考えてみたら、その友人の自宅に遊びに行くたびに聴く音でもあった。そして、いつだったか、その子に訊ねたのだ。
「これ、なんて言う楽器?」
「二胡。知らない? うちのお母さんが大好きで、しょっちゅうCD流して聴くの。」
・・・・・ 二胡。これが二胡かあ。
こういう経緯があって、二胡が名実ともに私の人生に深い関わりを持つようになっていくのである。