ろれつが回りにくくなり、足元が危なっかしいレベルに達するのがビール500ML6缶を過ぎたくらいだ。微妙なところだった。相当危険な状況を示すのは、彼が英語でしゃべり始めた時だ。リーはアメリカの大学院で2年余り学んだので、英語は達者である。
そして、レッドカードとなるのは日本語が滑り出した時だ。大学は日本語学科卒だ、今でもある程度覚えている。
私に被害が及ぶほど、リーの酔いはひどくなかった。
次の朝も結構早く起きた。が、一日中しんどそうだった。
台湾も日本同様、昔ほど男尊女卑とか、産むならまず男の子、という偏重、観念は薄くなっている。その分、産み手の女性の心理的重圧は軽減されているし、「やっぱり女の子は大きくなっても家族思いでいいわよ」と声高らかに言う人が老若男女問わず増えてきた。
だが、リーは純粋に、息子が欲しかったのだ。
そして、やはり、自分が長男であり、長男として長男らしくなるよう育てられ、彼なりの責任感や自覚は強かった。長男の息子、というとその一族の長さながらの「地位」を持ち、特に重宝されたので、夢尽き、相当残念だったのだと思う。
かわいそうではあったが、私にはどうしようもなかった。
それに、子供の性別を決定するのは男性側らしく、リーもそれは知っていた。
それでも、彼のショックも徐々に回復し、次女となる子の名前を真剣に考え始めた。