絵葉書では幾度となく見たことがあったが、実際天祥に向かう峠に入り、すぐ見えて来る壮大な景観に息を呑む。大理石がごろごろ。
「あれ全部大理石の塊だよ。」
リーがハンドルを取りながら話しかける。
ごろごろ、本当に数え切れないほどだ。
「盗まれないの?」
ハハハ、、、 彼は笑う。
「あんな思い物、そう簡単に持って行けるヤツはいないよ。」
それもそうだ。さっきからどうにも背中が寒々とするのは山中にいるせいだけではない、あの岩々の異様な大きさが私の感覚の許容範囲を超えているからだと気づく。へえ、自然の成せる業とはすごいものだとか、美しい渓谷だと感心する類のものではなく、恐ろしくなってくる。
「私、昼間でも一人でこんなとこ怖くていられないわ、、、、」
正直な感想をリーにもらす。
パジェロはひたすら登る。今夜の宿は天祥にある。3月26日金曜日。
平日ながら、道中自家用車や観光バスに何度も出会った。