季節もだんだん秋から冬の様相を呈し、気温が下がり始めたので、よっぽどのことがなければランを外に連れ出すことはなかったが、親戚の者やリーの同僚(私の元同僚でもあった)たちがお祝いに訪れるのを、私はひどく警戒した。
たとえば、ランのベッドを置く部屋のドアに「赤ちゃんがいます。マスクをしてお入りください。」と貼紙していた。イラストも描き、可愛らしいものだったが、リーには時々「これ、やめたら?」とたしなめられた。風邪とはっきりわかる症状が現れていなくても、大人の息には赤ちゃんには抗し難い雑菌が含まれていることがあることを恐れていたのだ。
それから、抱っこしている際、うっかりランの頭が壁にコツンとぶつかりでもしたら、「内出血したらどうしよう」としばらく不安で落ち着かなかった。
実に、いわゆる、ヤなママだったのである。
しかし、あの頃はどうしようもなかった。小さく生まれて、弱いだろうと言われたランを守ってやらねばという使命感にガンジガラメにされていた。赦してほしい。
それにしても、ランはある意味、世話のしやすい子だった。小さくてもよくミルクを飲み、体調を崩すことも稀だったし、何よりも「え?こんな時期にもう笑うものなの?」と驚くほど早いうちから、満面の笑みを向けてくれた。その愛らしい、昔懐かしマルコメちゃんとでも呼ぶべき表情に、私は何度も何度も癒された。