ランは数日で保育器から出ることができた。珂産婦人科の数軒先にある小児科医が毎日巡回に来てくれるのだが、「小さいけどミルクもよく飲めるし、元気。大丈夫だ」と診断したのだ。
あらためて他の赤ちゃんたちと並べられると、小柄なランは際立った。私が8階の部屋にいると、毎日決まった時間に新生児室から坐月子センターに入っているママのところへ赤ちゃんが送られて来る。ママの部屋で授乳するためだ。
しかし、小さいランにはそれが許されなかった。抵抗力が弱いと思われ、環境を変えない方がよいということだった。
そして、誕生後一週間ほど経った時、ようやく「外出許可」が出て、ランは私の部屋にやって来た。そこで私は生まれて初めておしめを四苦八苦しながら替えたのを覚えている。やりにくくて途方に暮れたが、ランは本当に可愛かった。看護士たちにも人気者だった。
ところが翌日、ランは風邪の兆候を示す。新生児室以外の場所に行ったため、アレルギーが出たのかもしれないが、用心が必要だという。
私は青ざめた。こんなに小さくては薬も飲めない。ただでさえもろく、か弱く見えるランが病気になってしまったらどうしよう、、、、
結局ランは一回私の部屋に来ただけで退院することになる。
代わりと言ってはナンだが、リーが毎日のように夕方やって来て、そのツインルームに泊まって行った。相変わらずの大きないびき。私は連夜安眠できず、ツインルームを恨んだ。