だが、時折我に返ったように意識が覚醒する時がある。すると、右隣りにいるリーが眼鏡をかけ、その頭に義母の洗面所から借りでもしたのかと思しきヘアキャップを被る姿が悪い夢のように映り、吹き出しそうになった。
何分ほど経ったのだろう。永遠に思えた痛みだが、「もう少し、がんばれ!」という陳医師の声で再び意識がはっきりした時には、胎児が下腹部まで下りて来ているのがわかり、グワーッと力んだらスウーッと身体が軽くなった。
生まれた。
だが、泣かない。
看護士がお尻でも叩いているようだ。そして、ようやく「あ〜ん、、、」と泣いた。弱々しい声。本当にこの子は大丈夫なのだろうかとオロオロしていると、看護士が赤紫色をした赤ちゃんを抱いて、私の顔のところまで見せに来てくれた。予想通り、女の子だ。
「大丈夫。これから身体を洗ってあげて、保育器に入れますからね。」
誕生後、すぐ量った体重は2370g。保育器に入れるのは、陳医師の判断で決められた。
よかった。産めた。まだぼんやりとしか見えないリーもたいそうホッとし、感激している様子だった。そして、陳医師に採ってもらった臍帯血バンクに預ける血液を受け取り、退室した。
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