SARSの流行は依然おさまらず、香港より入国した者は10日間の自宅待機が命じられた。
「何百人もの人がそうして台湾に入国するんだから、何しようが監視しきれないんじゃないの?」
私は訊ねた。
しかし、本当に、厳格に、自宅待機は監視、管理されていたのだ。
リーは実際、10日間一歩も外出できなかった。いわゆる保健局みたいなところからいつ電話がかかるかわからず、居住地区の区長というか自治会長というのか、そういう人にも連絡が入っており、彼が時々在宅をチェックしに来ると言う。
「食事は?」
そうだ、それも気になる。
「お袋が作って届けてくれる。それに、昨日は弟が即席麺とかお菓子とか持って来てくれて、まったく不自由してないよ。外に出られないから、運動不足で太ってしまう方が難儀だなあ、、、」
とのことだった。
長い10日がようやく過ぎ、リーは徒歩でも通える本社へ車で通勤し始めた。
私も少しずつ成さねばならない手続きに、重い腰を上げねばならなかった。
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