6月になり、幾分楽になったような気もした悪阻と依然闘っていた私に陣中見舞いのような、うれしい贈り物があった。胎動である。
主治医によると、もう始まりそうなんだけどな、ということだったが、まだだなあ〜と思っていた矢先、あ、これかな?と感じる異変に気づいたのだ。初めての出産で、胎動がどんなものなのかもわからなかったというのか、イメージしていた胎動とちがい、見落としていたのだった。
胎動はぐりぐりぐりっという感じ。ころんころん、でもなく、くるくるっでもなかった。これかな、もしかして?と6月中旬に入る頃気がついた。
体験済みの友人に訊くと、やはりそのようだった。
それからは、胎動のヨロコビと可愛さに大きく支え、励まされたように思う。私のお腹には、本当に、赤ちゃんがいる。いのちが育っている。胎動が始まり、やっと来た実感は、日々の大きな原動力になった。
しかし、のんびりもしていられなかった。日本で取得せねばならない、いくつかの書類の申請の中には、県庁所在地にある県警本部まで行かなければならないものもあった。車にしろ、電車にしろ、片道2時間ほどはかかる大移動を思うと、気は重かった。