リーが傍らにいて、同僚から詳しくその医院の住所を聞いていたからよかったが、自分だけなら迷子になりそうだと思った。地下鉄の駅から地上に出て、数分歩いた後に行き着いた重厚なビルの階上にくだんの小児科はあった。
エレベーターで上がったフロアには他にも診療所が入っていて、小児科のそこを探しあて、ドアを押した。小児科医院らしく、待合室には色鮮やかなぬいぐるみや小さなおもちゃが並んでいた。
小児科医で本当に大丈夫なのだろうかと言う疑念と、可愛らしい雰囲気に和む心地良さが同居した。
医師は広東語訛りの聞きづらい中国語を話したが、リーはちゃんと理解し、次々と言葉を交わした。
SARSという病気が流行しかけているが、妻はどうなのか。
妊娠していることが今日わかったのだが、薬は大丈夫なのか。
私はリーの反応と言葉に神経を注いだ。
医師の診断は私たちをホッとさせるものだった。
SARSではなく重症の気管支炎で、薬は妊婦にも害のないものを処方する、これまで飲んだ分については影響ないであろう。
心なしか帰りは2人の足取りが軽くなった。また効かなかったらどうしようと私は気にかかったが、妊娠の喜びが私にパワーを与えてくれていた。