私は毎日リーからの連絡を待った。出勤してすぐパソコンをONにし、メール以外にも、当時普及して便利だったICQの機能を使って、彼が連絡して来ることを祈った。また、自分から彼にそれを送るだけの話題ができることも期待して過ごすようになった。
そのうち私は、エスカレートする自分の言動に思い至り、また、リーと自分の気持ちの温度差の違いにも気付いた。飽くまで彼はいち上司であり、私に個人的な好意を持っていると言われたことがない点を忘れてはならないとも言い聞かせた。
何度か経験したことのある「片思い」の切なさに再度苦しみながら、リーに主導権を奪われたような日々が始まった。
旧正月が近づく頃になった。台湾にも忘年会をする習慣がある。中国語で「尾牙」と呼ばれるそれは、旧正月前の一ヶ月のうちに催されることが一般的で、私が勤めていた会社も業績が良かったこともあり、それは盛大な尾牙を計画した。
その尾牙に出席するために、リーも香港から帰って来ることになった。