だが、私は留学期間を一年ほどと設定していたし、何よりも中国語を少しでも多く学び、吸収したいと考えていたので仕事のことは考えず、とにかく真面目に勉強した。
中国語に「水土不服」という言葉がある。当時、私はまさにその状態だった。と思う。「水土不服」は、いわゆる水が合わなくて身体をこわす、のような意味だ。
あの頃の台北は、正直言って汚かった。まず、空気が悪かった。排ガス規制が緩かったのだろう、晴天が続くとなんだか大気が茶色っぽく見えて、まとまった雨が上がると、その汚れが浄化されたことが容易に見て取れた。
水道水もひどかった。常にではないものの、見るからに茶色い水が蛇口から出てくることはよくあった。生水は飲めず、どの家庭でも煮沸してから飲用としていたが、それでも気持ち悪くミネラルウォーターを買っていた。
そういう原因だけではないかもしれないが、私はたびたび風邪をひき、胃腸を壊し、自律神経失調症のような病名をつけにくくも深刻な症状を発症し、何度となくベッドに臥せって勉強した記憶がある。