最初はどこにでもある神社かお寺だろうと適当にふんふんうなづき、もう寄らずにこのまま行こうよおと内心思っていると「西遊記」とか「三蔵法師」という日本人にも馴染みのある単語が耳に引っかかる。
そのため、だんだん真剣に聞くようになるし、リー自身、私の意見を訊くというより、すでに寄って行こうと決めている様子だ。
日月潭青年活動中心を出て5分ほどで、湖畔に車を停め、道路を渡り玄奨寺の石段を上る。ランとメイの足にはきつい石段で、手を引いてよいしょよいしょと行く。
庭や建物を修理する作業中のおじさんたちがいるだけで、参拝者や観光客らしい人は一人もいない。一日の参拝者で最も早い時間に属すのではないかと想像する。
この玄奨寺、家族旅行を計画する段階では話題に上らなかったが、知る人ぞ知る由緒あるお寺である。
なんとあの「西遊記」の玄奨三蔵法師の遺骨の一部が祀られている。玄奨像や天竺への旅の足跡を表したレリーフなども飾られているのだ。
我が家の4人が本殿に入って間もなく、尼僧さんが現われた。茶の作務衣のようないでたちで、頭を丸め、小柄でにこにこ笑って説明してくれる。娘たちにも話しかけたりあやしたり、和気あいあいだ。
その遺骨を見る。純白だ。聞くと、凡人の遺骨とは大きく異なるらしい。私は尼僧の話にリーとともに耳を傾けた。