すでに持っている二胡が60000円くらいなので少し高くなるが、私も二胡中級者の仲間入りをしていたし、これくらいならへそくりを出す気は十分持ち合わせていた。一本だけでは心もとなかったし、娘たちが大きくなったら連弾する夢もあるし、ぜひもうひとつ欲しかった。10万円近い買い物は安くないが、二胡は1万円ほどから上は50万円やそれ以上のものもある。よって、これだけ二胡をこよなく愛する私にはさほど度の超えたゼイタク品とは思わなかった。
最初手に入れた二胡は蔡老師が先進楽器で品定めしてくれたものだったが、その楽器展で私が気に入ったものの方が音が低く、まろやかな音色がした。数年弾いていると、だんだん自分の好みの音というのが無意識のうちに定まってくるものだと感じる。値段や外観だけでなく、やはり自ら弾いてみて音を聴かないといけない。それに「弾き心地」というのも確かにある。
私はその上海で制作された紫檀の二胡を買うことに決めて、顔見知りの女性店員・李さんを呼ぶ。
弓や駒は他のものと替えてもよかったので、私は弓をちがうものにしたいと希望を述べ、各種備品の多い本店へ後日出向き、その時に代金を払って持ち帰ることになる。ケースや松脂などはサービスでついてくるので助かる。
リーと携帯で連絡を取り、私は商談を済ませ、外に出る。
もう初夏の日差し降り注ぐ台北は暑いほどだった。