その案にリーが積極的だったのは、台北101やその周辺はにぎやかで、遊ぶにしろ、見るにしろいろいろ楽しめるし、飲食店も多く、お天気の良い日曜日、娘たちを連れ、彼自身ぶらぶらしてみたかったと見える。
10時に出発。
リーは楽器展に興味はなく、娘たちと遊んでいることにして、私だけ会場に向かい、入場券150元(当時約470円)を払って中に入る。出展者やブースはなかなか多く、来場者もかなりいる。楽器の音が入り混じって響く。
私は馴染みの先進楽器のブースを目指し、さっそく二胡を手に取り、音や作者や値段などを吟味する。最初の二胡を買って3年半、もうひとつ欲しいなあと思い始めた頃で、気に入ったものがあれば購入する意思があったので力が入る。
その熱心な様子を見てか、店員がパイプ椅子を持って来て、
「座ってゆっくり弾いてみて」
と言ってくれた。レジの方には顔を見知った女性店員もいて、時間を気にしながらも気持ち良く過ごす。
そのなかで気に入った音色が出る二胡があった。有名な上海の作者で、木材は紫檀、と願ってもない好機と思い始める。
「普段は定価から15%オフだけど、楽器展中は25%引きよ」
と馴染みの女性も声をかけ、私の心はぐらぐらその二胡へと傾いていった。