3月22日投票時間終了後、開票作業が始まり、その日のうちに馬英九の当選確実報道、ついに新総統が誕生するはこびとなった。8年続いた陳水扁の民進党から国民党に政権移行、陳水扁は家族親族によるマネーロンダリングなどの罪で起訴され、裁判が続いている。貧困層がさらに貧しくなったと非難され、世論は国民党による新台湾の再生への期待が高まっていた。
今でも記憶に新しい。義母宅にいた私たちは、馬英九の当確を知った人々が義母宅の入るアパートの細い通りで爆竹を鳴らし、馬新総統の誕生を盛大に祝った。幹線道路から奥まったその200メートルほどの通りを貫く爆竹は夕暮れの町に響き、この時ばかりはその爆音が耳に心地よく感じた。
国民党・馬政権発足後の大きい変化のひとつは中国との関係改善で、台中渡航には必ず香港経由ではならなかった航空便に直行便が新設されたことである。台北の隣り、桃園縣にある台北国際空港でなく、台北市内にある松山空港発着便もでき、とても便利になった。
しかし、今から思うに、馬英九と台湾国民との蜜月はそう長く続かなかった。
2009年夏、台風災害時の対応のまずさへの不満は、与党への失望感を煽った。
民進党、国民党、どちらが政権をとるとらないではなく、民が潤い、豊かに暮らせるようになればよい、というときれいごとのようだが、実際政治の究極の目的はそうでないかと思う。リストラ、収入低下などで生活が困窮し、台湾でも自殺者の数は少なくないのである。