グラウンドとしてはかなり整備された立派なもので、広さも十分だったが、私たち4人が到着した頃にはすでにかなりの人だかりであった。
入口付近には支持者たちが党首である馬英九や、その地域の候補者の名前入りの帽子や小旗を笑顔で配っており、私たちも喜んでもらい、娘たちも旗をうれしそうに振った。願いを同じくする者の集いという感じで和気藹々、みんな親しげに接し合う温かな空気に包まれている。
さて、候補者の演説などが始まる。
市場側に設けられたステージに向かい、人々は耳を傾ける。
しかしだ。目立ての馬英九はまだ姿を現さない。そわそわ、どきどき
きょろきょろ。娘たちも「まーいんじょうは?」と訊いてくる。まーいんじょう、とは馬英久の中国語による発音だ。
かなり待った。かなり待って、ようやく三つある門の市役所側のところから馬英久が入場!
「馬総統、ニイハオ!」
司会の女性が、まだ総統になっていない彼を早くもそう呼び、歓迎する。場内の観衆が一斉にそちらを向き、歓声を上げる。「待ってました!」、まさにそんな盛り上がりだ。
馬英九がやっとステージにたどり着いた後も興奮は冷めず、いったいこれは誰の選挙イベントかと思う。
「まあ、だいたい馬英九見たさに来てる人ばっかりだろうからね。」
とリーが言うが、本当にそうだろうと思った。
私は初めて生で見る馬英九にうっとり。双眼鏡は大活躍。
テレビで見るよりさらに長身で、声も甘く、マスクも然り。
「見えないよおー」
と小さい娘たちは不満そうだが、私は気もそぞろであった。