それはいいとして、台湾も12月に入った。
8日、土曜日だった。リーが言う。
「今日、そこの小学校に馬英九が来るよ。見に行く?」
日本で台湾の政治や政権について詳しく報道されることは少ないが、今の総統(日本の首相に当たる)は誰かご存知だろうか。
李登輝、陳水扁と来て、現在は国民党の馬英九である。民進党から国民党へ政権移動した画期的な総選挙であった。
さて、この馬英九氏。
台北市長や国民党党首を歴任してきた人だが、長身かつ甘いマスクでかねてから特に女性に人気の高い政治家だった。「有権者が全部女性なら彼が勝つのに」と皮肉られることもあるほどだった。
しかし、ただルックスが良いだけではない。私が大学付属の学校で中国語を学んでいた頃、政治の話になると先生たちの中で馬英九をけなす人は一人もいなかった。ハンサムだけじゃない、人柄がいいのだ、と男の先生も話していた。そんなわけだから、私の馬英九に対する印象が悪いはずはなかった。
現に、義妹や叔母たちも彼のファンで「腕組んで写真撮ったことあるわよ」なんて自慢げに言っていた。
その晴れた12月上旬の土曜日、私が住む地域から出馬する国民党党員の選挙活動のイベントに、党首の馬英九が応援に来るということらしい。まだ彼が総統選挙を征し、総統になる前のことである。
「行く、行く!」
すでに娘たちも見知っていた馬英九を家族そろって見に行くことになった。歩いて5分足らずの小学校グラウンドは朝から準備や警備の警官などでにぎやかだった。