私は滅法アルコールに弱い方で、コップ1杯でデキアガッテしまう体質だが、昔お酒屋さんでバイトしていたくらいだから「お酒の世界」は大好きだ。リーの描いた夢にものった。
しかし、現実は甘くない。
日本国内でも酒税法などは改正されることがあるが、数年前WTO(世界貿易機関)の法改正で酒類の輸出入時にかかる関税が高くなり、採算を考えれば事実上そのテの商売は不可能に近いものになっていた。
私の知り合いの社長も「そりゃあ、できれば僕の酒が台湾にも渡ってくれたらうれしいけど……」と言い、一応私たちの計画を聞いてくれたが、結局前進できず、残念やら申し訳ないやらで苦い思いが残った。
でも、いつか社長のお酒を台湾に!との淡い夢は不思議と胸を去らない。
7月に入っていた。
さすがに日本もどんどん夏に向かい、気温を上げていた。
私はもう一つ、一時帰国前から描いていた願望を形にする。我が実家の菩提所である寺のご住職さんに手紙をしたためたのだ。封書にする。
父に、宛名書きは何とすればよいのか問うと、
「そら、ご住職様や。」
とのことだったのでそうする。
何度かここでも書いたが、私にはまだどうしても私を解放しないトラウマのような心の痛みを抱え、実生活の不如意も重なって長く親しんだカトリックを離れ仏教書に没頭していた頃であり、書物だけでは理解しがたい点は増え、ぜひ直接話を聞いてみたいと考えるようになっていたのだ。