その翌9月7日、メイを義母宅に預け、私はランと徒歩5分ほどの音楽教室に二胡レッスンに向かう。これがその教室での最後のレッスンだった。
日本から戻り、だいたい毎週水〜木曜日と義母がメイを預かってくれれるようになり、その時レッスンを受けていたが、義母も用事が入ったり、体調がすぐれず、子守りキャンセルの事態もあって、二胡修行継続危機の状況にあった。
もうすぐ3歳になるランひとりなら、教室の受付嬢などが面倒をみてくれたが、2人となると気が引ける。
よって、思案の末、蔡老師に打診し、自宅に教えに来てもらうよう頼んだのだった。もちろん、教室のオーナー夫婦にも事情を説明し、理解してもらえた。彼らも幼い子を持つ身、寛大だった。
自宅に来てもらってのレッスン、授業料はいかほどか見当がつかない。すでに気心の知れた蔡老師に尋ねると、
「私の仲間たちの間では、ワン・レッスン(1時間)700〜800元ね。」
とのこと。音楽教室では初級700元、中級800元だったのでかわらない。蔡老師自ら、700元で、と申し出てくれて、決まり。約2400円くらいだった。日本で二胡の個別指導を1時間受けると5000円はする。それに比べると安いが、台湾の物価から考えれば、楽器を習うのは高くつくことだった。
自宅に来てもらうのには恐縮したが、音楽教室だと蔡老師の実際の取り分は300〜400元だが、自宅レッスンなら700元すべて彼女のものになるのはうれしかった。