私はそのコピーを読み、物語のあらすじと読後感想をすべて中国語で書き、メールで送信した。
金さんたちがどう感じるか、とても不安だった。ひとつは、私の書評の形式がそれでよいものかということ。もうひとつは中国語能力である。特に初級者のそれは、日本語を中国語に翻訳する際、どうしても和製中国語になりがちだ。異なる言語間には、まったくのイコールにならない各言語独自の決まりごとや性格がある。日本語の言い回しをそのまま中国語の単語を使って訳すと、台湾のネイティヴ・スピーカーならまず発想しない文になることは少なくないのだ。
だが、果たして、金さんから明るい声でOKの返事があった。
その後は何冊かまとめて、日本語の本が宅配便で自宅まで送られてくるようになる。
私は家事子守りの合間をぬって、この書評ミッションを最優先してこなすようになった。書評し終わり、OKが出ると、また何冊かG出版社から本が届き、その時、ドアまで来る宅配業者に読み終わった分を手渡す方法をとった。
必要とされている、私にもできる仕事がある。
その思いと充実感は久しぶりに味わう幸せな感覚であった。