私の面接時には何人かの幹部が試験に顔を出したが、後々覚えていたのは彼くらいだった。もらった名刺から考えると、リーも面接官の一人だったようだが記憶にない。小宏は長身で、台湾人には思えない顔立ちをしていた。アジア人なのだが、生粋の中国人とちがう、彫りが深く個性的な顔なのである。
高校時代の同級生であるリーは、小宏がそれほどモテたようには言わないが、「何人か一緒にいて目立つのはヤツ」と一度言ったことがある。
さて、G出版社長令嬢と小宏の馴れ初めである。
ある日、仕事の話をするため社長令嬢は我が社を訪れる。
その時、会議に加わった中に財務部長だった小宏もいた。そして
2人のロマンスが始まるが、初め積極的だったのは小宏の方だったらしい。
当時、社長令嬢はもうすぐ三十路を迎える頃で、小宏は彼女より4〜5歳年長、交際中の彼女がいたが、G出版社に方向転換する。「身内同伴可」な社員旅行には交際していた彼女を連れて来たこともあり、小宏の行動に社内ではブーイングが起こった。
だが、社長令嬢と小宏は逆風をものともせず、逆玉の輿結婚と相成ったのであった。「お家柄」は妻の方が上なのは歴然としており、結婚と同時に小宏は令嬢のお〜きなマンションに越し、義理の両親との同居が始まった。日本より格段に少数な、事実上、いわゆる婿養子に入ったのである。