2時間近くかかって真新しい芝生色の一式が収まり、寡黙な2人の男性は帰って行った。
その後は床を掃き、拭き、外に出していた鍋やらお皿などごちゃごちゃした台所用品を整理して行かねばならない。
新しいというのは気持ちよいものだが、まだソウル時代のあの広〜いキッチンに立った感覚が抜けず、たいした感激はなかった。
それに、私の工事の後始末や清掃のやり方がリーの思いに沿わず、すごい剣幕で怒鳴られ、泣きながらの雑巾掛け。
ハングル語ができず、ソウル支社のリストラを断腸の思いで断行しなければならなかったストレス多い頃の私への言動を彼はその後わびたが、私にすればソウルもここも何ら変化はなかった。
しかし、あの頃、私にはとてもうれしいことが起こった。在宅で出来る仕事の依頼が来たのだ。
私とリーの共通の友人(以前の同僚)小宏がもたらしたその仕事とは日本語の本を読み、大要と感想を中国語で報告する、いわゆる書評だった。
そんな仕事はしたことがなく不安も大きかったが、とにかく興味があったし、やってみたいと思った。
まず小宏からリーに打診があり、その後出版社の担当者から直接私に電話がかかってきて、話は進んでいった。
さて、小宏は私の元同僚で、リーの高校時代からの友人だ。リーがいた会社の面接試験の際の面接官がこの小宏だった。
私とリー同様、後に小宏もあの会社を辞め、台湾でも大手の類に入る出版社に「永久就職」した。そう、彼はそのG出版の一人娘と結婚したのだ。
台湾版逆玉の輿の話はまた明日。