リーが支店長を務めるソウル支社は大幅なリストラを断行し、その心労で彼はひどく疲れ、嫌な役回りを悔やんだ。
時には、支社自体をたたむという話も出たし、以前からあった転職、起業への熱意もリーを迷わせていた。
実際、知人からいくつか会社を紹介されて、少しずつリーは「企業研究」を進めていて、私にも時々相談を持ちかけた。
私は転職・起業構想に否定的であった。
公務員の娘として育った私には、起業、経営というものは実に畑違いでコワいものに映ったし、転職が持ち上がっている会社はまだ駆け出しで将来を展望しにくく、給与も今よりずっと減るらしい。
今の会社は私も2年余り勤め、愛着もある。ソウル暮らしも続けたい。
リーにはそう答えたが、結局は彼が決断するままにするしかないことはわかっていた。
2月28日、朝7:00前にリーは迎えに来たタクシーで仁川空港へ向かった。恒例の台湾本社への出張だ。
翌3月1日、うっすらと雪化粧。日は長くなったが、まだまだ寒い日は続いていた。
台北で、リーに転職先を紹介した友人と頻繁に会っているようだったが、再度ソウルへ帰って来たときには、もう既に転職を決めていた。
あと1ヶ月ほどでソウルから撤退?!、、、、ちょっと待ってよ、、、、