その日はリーの運転で珂産婦人科での定期健診と、警察局へ交付された居留証を取りに行く予定だった。
暑い日が続いていた。一年の半分は夏と言える台湾も、日本同様7月半ばから8月末頃までが最も暑さが厳しくなる。
ヒートしていたのは天気だけではなく、私とリーの「冷戦」だった。
羊水検査をめぐる意見の相違が引き金になったようにも見えたが、正直に告白すると、入籍後大小様々な価値観や習慣などのちがいで頻繁に衝突していた。
リーは正直で、誠実で、まじめな性格だ。年配者を敬い、他人に親切だ。笑顔が可愛く、それを見た人はほぼ確実に「やさしそう、いい人そう」と言う。同じ会社で働いていた時の私もその印象を持っていた。
だが、惜しいことに身内には、身内の中でも特に近しい存在の私や義母、義姉の3人にはきつく、険しい表情で意見することが多かった。
野菜の切り方、魚の焼き方、モップの使い方、洗濯の頻度、妊婦として摂らねばならない食事、ランの服装などなどにチェックが入る。
機嫌の悪い時と良い時では180度言動が変わることが多く、どれに従ってよいのか、たびたび戸惑った。
洗濯機やパソコンなど家電製品が故障すると、私が壊したと必ず責められた。
妊娠中は匂いや味に敏感になる。まずいことに悪阻のひどい私は、それまでなんともなかったリーの汗や煙草の匂いがダメで、そばにいるのがつらくなっていたことなども衝突の原因の一つだったと思う。
あの朝は、また食事のことで厳しく忠告され、私は反抗した。
「私だって、自分でちゃんと考えて食べてるわよ。」
「自分でやってる、考えてる、、、、、 そんな自分が立派なら何でも自分でやったらいいよ。今日の検診と警察局行きも自分でやれよ」
リーは言い残し、バタンッとドアを閉め、出勤して行った。
posted by マダム スン at 05:12|
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第2子出産も台湾で
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