私が本当に傷つき、通じぬ思いに心を痛めていることをリーに伝えたかっただけなのだ。手紙を書いても、口で説明してもラチがあかないので、明確な行動に出るしかなかったのだ。
その数日後、台風が台湾を直撃、台北も一日「停止上課上班」となった。
台湾に台風が襲来した時、みなが注目するのはこれだ。「上課」とは学校へ行き授業を受けることで、「上班」は出勤し仕事することだ。それらを「停止」せよという意味で、いわば警戒警報のようなものである。勢力が強い台風が来ると、天気予報やテロップでこの警報が知らされる。まず、南部の数縣に発令されて、数時間後それが北上するのが常である。台風の進路により、たとえば、東部数縣のみ「停止上課上班」になり、他は平常どおりということも多々あるわけだ。
私はその警報を嫌う者の一人だが、台北も文字通り一日「自宅待機勧告」の措置がとられた。
警報が出るくらいだから、外出には適さない。缶詰状態に近い一日を過ごす。
それに、リーに作る食事の回数が増えるわけで、特に味覚や調理法で衝突することが多い我が家の緊張感を高めるのだ。
ビクビクと過ごす台風の日。外へも行けず、つまらない。
灰色の空を恨めしく見上げる。
はーっ・・・・・
しかし、負けてはならない。ランがいる。ランがいる限り、私はここで踏んばらねばならないのだ。
そう自分を叱咤した。