広いロビー。ベビーカー上でまどろむランと、リーのチェックイン手続きを待つ。チェックインカウンターから20メートルほど離れたところにいると、リーがやって来て言う。
「ベビーベッドを無料で貸せますよ、って。借りた方がいいよね?」
どうやら私たち母子が見えて、ホテルスタッフの方から気を利かして訊ねてくれたらしい。もちろんその方がありがたい。
洋風のツインルームに入り、しばらくすると、簡易なものではなく、立派な可愛いベッドが届けられた。窓際のベッドと窓の間にすっぽり収まる。
実際、5ヶ月のランを連れての旅行は、大人だけのそれとちがい、何かと神経を遣った。リーも私も新米パパママゆえ、常に様々な状況にうまく対処する臨機応変、柔軟、創造的脳を要求された。ベッドが来たら来たで、どうすればランが心地良く過ごせるかあれこれ協議した。
その日もよく晴れて、気温が上がった。台北より南の台東の方がもともと気温は高めのようだが、3月下旬というのに27度あった。リーに似てランは暑がり、汗っかきのようで、気をつけてやらねばならない。旅に出て以来、食欲や排便には変化はなかった。
ベランダに出ると、下を走る道路や、前を流れる川やその向こうの山並が見渡せる。リーは時々そこへ出て煙草をふかした。私も彼が吸っていない時に風にあたりに出る。気持ちいい。
リーの禁煙宣言を聞いたのは香港時代だった。なのに、結局やめられずズルズル、、、、、彼自身とランのためにも、どうか正念入れ直し、煙草を断ってほしい。