いや、私本人は安産だなどと思っていなかった。痛いのだから。大げさな形容だと日頃感じる、死ぬほど痛い、というのを地で行く痛さなのだから、何が安産だ!と反論したくなったが、あれこそ安産らしかった。
誰が見てもおかしいであろう歩き方をして、私は新生児室のカーテンが開けられる面会時間目がけ、ランを見に行った。気になったし、恋しかったし、可愛かった。
新生児室には30人近くの赤ちゃんがいた。看護士が交替で24時間世話をしてくれる。保育器に入っているのはランだけで、ひときわ目立つ。集団の中でひとまわり小さいのも一目瞭然だ。
「あ、この子のママ、日本人みたいよ。」
保育器に掛けられた名札には、ランの出生日、身長、体重、頭囲、血液型、主治医名と母親の名前が書いてあるのだ。目立つ理由はそこにもあった。
ママたちはおっぱいの時間になると、新生児室横の授乳室に行き、看護士に我が子を連れて来てもらってミルクを与えた。少ないながら私もミルクが出たのでそうしていたが、まもなく、
「ランちゃんは小さいから他の子よりたくさんミルクを飲まないとダメなんだけど、吸う力も弱いからママのおっぱいを飲んでるうちに疲れて寝てしまうわねえ。お母さん、おっぱいを絞って哺乳瓶に入れたものを飲ませるようにしましょうか。」
と看護士に言われてしまった。
それから、アレルギー体質との検査結果が出て、それ様の粉ミルクを飲ませなければならなかった。
ラン、がんばって、、、、、、 小さい我が娘がいっそう愛しく思えた。