だが、リーは、ランが5ヶ月くらいになったら3人で愛車パジェロに乗り、旅行したいと考えていたようだ。
私には気になることが二つあったので、彼に訊いてみた。
「ランはどうするの?こんな小さいのに、旅行できる?お義母さんに預けるの?」
「連れて行くよ。5ヶ月くらいならもう大丈夫だよ。」
そうなのか。ならよかった。ランを預けるのは気が進まない。
「お義父さんの具合、悪いでしょう。こんな時に旅行なんて行ってられる?」
「この前見舞いに行った時、旅行の事話したら、行っておいでって言ってくれたんだ。」
義父の性格からすれば、行くな、と言うのは考え難いが、まあそう言ってくれるのならいいだろう。
義父は罹患率の低い特殊なガンだった。台湾で二つの指に入る総合病院のうちの一つと自宅での療養を繰り返していた。ガンとわかった時点で告げられた余命期間を大幅に更新していたが、治癒と長命を願う家族と本人の思いは強く、その数ヶ月前より新薬の服用を始めた。
が、賭けは裏目に出た。義父の病状は改善せず、身体がむくんだり、皮膚が赤らんだり、痒くなったりする上、湿疹が乾き、ボロボロと皮が剥け落ちるようになっていた。かねてからあった咳や倦怠感に加え
厄介な新薬の副作用が深刻な状況になっていたのだ。
心地良い日和を心の底から喜べない春だった。