案の定、9月に入っても空は知らん顔で、灼けるような夏を供給し続けていた。
珂産婦人科での定期検診は2週間から1週間に一度となり、依然リーが予約時間に合わせて車で送迎してくれた。
珂産婦人科へはバスで行ける。乗り換えなしで約20分ほどだろうか。その先の橋を渡れば台北市内に入る辺りで、周辺はにぎやかなところに位置していた。
しかし、私は公共交通機関を利用するのが怖かった。悪阻のため常につらかったし、台湾のいわゆる市バスは、日本のそれを思い描いていては面食らう。運転手によるのだが、ジェットコースターに乗り合わせたかと思わせるシロモノに当たる可能性があるのだ。バスには時刻表がなく、運転手は道路状況や客足如何でどうにでも走れた。道路が傷んでいて、ひどく揺れる場所もあったし、リーもバスには乗るなと釘を刺していた。
タクシーに不自由することはなかったが、タクシーで行くなら僕が行く、とリーは言うし、検診はとにかく「保護者同伴」だった。
これはありがたいことだったが、ユーウツの源でもあった。一緒に行きたい、ということは、リーも胎児の成長情況に至極関心があるということであり、検診結果を受けて、あれやこれやと「指導」やら「警告」が言い渡されるのだ。それらは医師の言葉より重く、厳しく、事細かであった。