引っ越しの日、リーは香港だったため、彼の弟夫婦が車で迎えに来てくれた。大きくないそれにあふれるほど家財道具を詰め込み、約15分ほどの道のりを行った。
日本の両親にはすべて報告してあった。リーへの真摯な気持ちをメールにしたため、「彼と結婚したい。ずっと一緒にいたい」と書いた。
それに両親は反対できなかった。一度目の結婚で、私が跡取りの責任を感じ、不本意に嫁ぎ、別れたことを不憫に思っているのも原因だったと思う。反対されても仕方なかった、私はあくまでひとりっこで、その任務はやはり果たされるべきだったのだ。
だが、先のことなど考えていられなかった。数十年先どうなるのかということばかりに足をとられていては今を逸する、という不安が私にも両親にもあった。
子供の数が減り、結婚や家に対する観念が大きく変化する中で、躊躇しつつも時代の波に乗り、自ら新たな心地よい境地を開拓しようとの意気込みもあった。
いや、そう自分を鼓舞するしかなかった。結局リーをあきらめることはできそうになかったのだ。