初秋とは名ばかりで、相変わらず台北はうだるような猛暑にあった。メールなどで連絡を取り合い、5月香港から帰って来た彼と夕食に出かけた時、私はとうとう彼を慕っていることを告白したが、「香港にいるし、今は仕事に集中したい」と事実上、好意を拒まれた経緯があった。
それでも、リーは私とある一定の距離を保ちつつも、普通の部下上司以上の関係を受け入れた。
その、9月末はいつもより彼の態度がやわらかく、私のアパート近くまで車でやって来て、どこへ行こうか、暑いなあ、としばらくドライブした後、彼のマンションに連れて行ってくれることになった。私は驚きながらも喜びに胸が高鳴った。
「長い一人暮らしだから、何にもないよ」
と言うリーの部屋で、私はくつろいだ。彼は私にお土産だと言って、
以前私が愛用していると話したことがあった香水をくれた。香港の免税店で買ったようだったが、大瓶だし、かなり高価なはずだった。
夢かと思った。
しかし、案の定、その夢を消すどんでん返しが来たのだ。